承認要求

大人だって子供だって、皆んな認められたい。年齢に関係なく、皆んな承認要求があります。慣れない環境で頑張っている娘、学校ではさぞ苦労しているでしょうから、お家ではできるだけその頑張りをすごいね、がんばってるね、と励まし、彼女の努力を評価することを心掛けていました。しかし、ある日の娘の一言で、私は胸を締め付けられるような気持になりました。

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すべての科目を英語で学ぶということ

イギリスに住み、イギリスの学校へ行くのですから、学校生活は全て英語になります。もちろん全ての科目は英語で学び、授業中のやり取りもテストも評価も英語です。当たり前のことですが、『英語』ができなければ評価は全てにおいて低くなります。いくら得意の計算ができても、文章問題の理解ができなければ回答は出来ません。正しく回答するだけの英語力がなければ、解き方が分かっていても解答用紙にきちんと書けないのです。Scienceに関しては、何を勉強しているのかも分からないということも…。日本と違って、生徒一人一人が教科書を持っていて、毎日持ち帰ってくることはありません。(基本的に教科書は存在しませんでした)ですから、家庭でのフォローも大変難しいものでした。本屋さんで教材を買ってきたり、Webサイトを利用して、絵や写真を見て、今勉強しているところを一緒に復習するなど尽力しましたが、宿題や日本語の勉強、習い事もあり、なかなか難しかったです。

「きっと自分は理解できる、大体は分かっている、英語力さえあれば先生の問いに応えられる」、そんな気持ちを毎日胸に抱えて、娘は学校での生活を送っていたのです。そして教室での評価も、子供ながらに思うところがあったようです。先生方はバイリンガルゆえの苦労を十分に理解してくださって、評価して励ましてくださいます。しかし、Reportで思うような評価がもらえなかったときはがっかりしてしまいます。そしてクラスメイトとのコミュニケーションも、最初は全く英語ができないわけですから殆どできませんでした。クラスに数名いる日本人のお友達にたくさん助けてもらったようです。しかし娘は社交的だったので、一緒に遊んだりするのは、いろんなお友達とできていたようでした。それでも、ネイティブのお友達はもちろん英語がお上手ですから、どうしてもコミュニケーションに難のあるNon-nativeのお友達ではなく、Nativeのお友達と遊ぶことが多かったようです。クラスで共通の認識は、娘自身も含めて、英語がまだそんなにできないから…。そういう評価になってしまうのです。

今まで日系の幼稚園で楽しく過ごしてきた娘にとって、できないことがある、そしてそれが学校生活を送る上で非常に大きな支障をきたす状況はとても大きなストレスでした。活発で物怖じせず、積極的に発言するお喋り大好きな娘にとって、言いたいことを自由に言えないことはとても苦かったと思います。お遊戯もスポーツも読み書きも、比較的よくできた彼女は、学校での自分の評価が今までよりも下がっていることに不安を感じていたようでした。そしてある日…。

ママ、スペイン語を習いたい!

「ママ、スペイン語を習いたい!家庭教師の先生を探して!」

(え?イヤイヤ、まずは英語でしょ…。)初めて娘にスペイン語を勉強したいと言われた時、まず私が思ったのは、英語ができるようになってから!英語が先!ということです。きっとほとんどの方がそう思われることだと思います。ただ、(どうしてスペイン語?)私の頭は???だらけになりました。理由を尋ねてみると、娘の答えに胸が苦しくなりました。

「だって、何やったって、英語が上手なお友達の方が上手にできるもん。英語が下手だと、何やっても1番にはなれないもん。でも、スペイン語はみんな初めてなの!一人だけバイリンガルの子がいるけど、他のお友達はみんな話せないの。だから、がんばってスペイン語を勉強して、私もやればできるところをみんなに見せたい!」

ガンッと頭を殴られたような衝撃を、今でも忘れられません。(あぁ、彼女は自分に対する評価に不満を持っているんだな。それでも、英語力がみんなに追いつくにはまだまだ時間がかかる。手っ取り早く、スペイン語で自分を認めてもらいたいんだ…。)そしてそれを、まだ6歳の子供が一生懸命に主張する姿に、思わず泣きそうになりました。幸い、学校でSpanishを担当してくださっている先生が、家庭教師を引き受けてくださったので、早速オンラインでお願いすることにしました。やり始めると、娘は夢中になって学びました。そして学校のスペイン語の授業で、それらを披露して、みんなから「すごいじゃん!」的な評価を得たのです(笑)。それからはもう、スペイン語の勉強が楽しくて楽しくて仕方ありません。どんどん先に進んで、先生も驚きの頑張りようでした。そして、得意教科ができたことで彼女は学校でも今まで以上に積極的に授業に参加し、そして楽しさも倍増したのです。

劣等感と承認要求

娘は英語ができないことで、クラスでは劣等感を感じていたのかもしれません。「どうせ分からない、Nativeのお友達の方がよくできるに決まっている。」それは当然のことです。まだまだ未熟な英語力で、全てを理解することは出来ませんし、Nativeのお友達と同じようにはいきません。当然のことです。しかし、英語で教育を受ける上で、それは大きな壁となり、そして時に子供たちに劣等感を抱かせます。劣等感を抱えたまま、毎日学校へ行くのは精神的にしんどいものでしょう。私だって、英語力に難がありますから、学校での行事に参加したり先生との面談、ボランティア活動など、参加すること自体は楽しみでも、「英語が分かるかな」、という不安は大きなストレスです。それを子供たちは毎日抱えているのです。娘はその劣等感を、みんなと同じ土俵で評価を得られるスペイン語を得意科目にすることで、跳ね除けようとしました。そしてそれは大成功を収めました。実際、彼女の学校での評価は、スペイン語をきっかけに、Kumonで身につけた計算の正確さと速さ、そして頑張って続けてきたバイオリンを披露することで、急速に上がっていったのです。

まだまだ幼いと思っていた娘の思いがけない一面を知って、子育ての難しさを改めて感じました。そして頭ごなしに、「スペイン語より英語でしょ!」なんて言って、きちんと聞く前に否定しなくてよかった、としみじみ思ったのです。自分と全く違う環境で成長する娘は、私とは全く違うレールの上を歩いています。私自身も、もう一度小学校からやり直すつもりで、一緒に歩んでいこうと思ったものです(笑)。スペイン語は今でも得意なようです。ちなみに、スペイン語は日本語と殆ど発音が同じらしく、日本人には学びやすい言語だそうですよ。とはいえ、私は英語でいっぱいいっぱいです(笑)。

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